目次
1 自然と環境
第1章 カナダと自然——広大な国土、豊富な資源、少ない人口
第2章 国立公園保護地区——自然保護先進国をめざすカナダ
第3章 カナディアン・ロッキーとバンフ——連なる尖峰と神秘の湖
第4章 ナイアガラの滝——先住民の聖地から世界の大観光地へ
第5章 プリンス・エドワード島——赤毛のアンの故郷
2 歴 史
第6章 ヌーヴェル・フランスと先住民——異なる文明の出会い
第7章 イギリスの進出——英仏抗争とフランス支配の終焉
第8章 アカディア人の追放——もう一つのフランス系カナダ史
第9章 二つのカナダの起源——アッパー・カナダとロワー・カナダ
第10章 一八一二年戦争——カナダでの「国民意識」の高揚 ほか
3 政治・外交
第14章 連邦主義への道——ピエール・E・トルドーの政治思想
第15章 ケベック問題——ケベコワとフランス系ナショナリズム
第16章 カナダとアメリカ——超大国の陰で
第17章 外 交——ミドルパワー・カナダの苦悩
第18章 一九八二年憲法——カナダ政治の転換点 ほか
4 経 済
第21章 カナダの経済発展とハロルド・A・イニス——ステープル理論
第22章 両大戦間期カナダの対外経済関係——対英依存から対米依存へ
第23章 トルドー政権下のカナダ経済ナショナリズム——公正な社会の維持か北米社会の統合か
第24章 加速する加米経済統合——FTAからNAFTAへ
第25章 情報通信技術産業——ICT立国をめざすカナダ ほか
5 民族のモザイク
第27章 多民族国家カナダ——カナダの移民小史
第28章 カナダ先住民——イヌイトとインディアン:現代に生きる先住民
第29章 メーティスの戦い——ルイ・リエル
第30章 「二つの孤独」を越えて——フランス系カナダとイギリス系カナダ
第31章 ヌナヴト準州——その成立と現状 ほか
6 社 会
第35章 アングロフォンとフランコフォン——二言語国家を支える言語グループ
第36章 「オー カナダ」——二つの言語を持つ一つの国歌
第37章 カナダ連邦騎馬警察——その創設の起源
第38章 カナダの市民社会——国際的な活動を中心に
第39章 カナダ人のアイデンティティ——アメリカ人ではないという意識 ほか
7 教育・言語・スポーツ
第43章 カナダの教育と多文化主義——二言語国家を支える言語グループ
第44章 カナダの大学——「聖」と「俗」、「理想」と「経済」の葛藤
第45章 アイスホッケー——カナダ生まれの世界的ウィンター・スポーツ
8 人 物
第46章 バンティングとベスト——インシュリンの発見
第47章 ワイルダー・ペンフィールド——脳外科のパイオニア
第48章 ハンス・セリエ——ストレス学説の創始者
第49章 ハーバート・ノーマン——“マッカーシズム”の犠牲者
第50章 マーシャル・マクルーハン——世界を驚かせたメディアの予言者
……
第56章 レスター・ピアソン——世界に愛されたカナダ人外交官
第57章 ロベール・ルパージュ——ケベックを越えた劇作家
第58章 グループ・オブ・セブン——カナダを代表する七人の画家
第59章 グレン・グールド——演奏会を拒否し、北の孤独に魅せられたピアニスト
第60章 オスカー・ピーターソン——ジャズ・ピアノの巨人
《執筆者一覧(編者以外)》
藤田直晴、田林明、竹中豊、細川道久、木野淳子、木村和男、安井丈記、吉田健正、加藤普章、矢頭典枝、桜田大造、大熊忠之、飯澤英昭、栗原武美子、井上敏昭、新保満、井由香理、岸上伸啓、高柳彰夫、岡本民夫、白水繁彦、浪田克之介、毛塚博史、中野利子、宮澤淳一、浅井晃、堤稔子
前書きなど
カナダは太平洋をへだてて、アメリカと共に日本に向き合っている国です。しかし、日本人の関心はほとんど、世界唯一の超大国アメリカに向けられており、その北に広がる国土面積ではロシアについで世界第二位のカナダについて知る人はきわめて少ないのが実情でしょう。カナダはG7のメンバーであり、日本の国土の二七倍の広さをもつ“大国”なのですが、人口規模からいえば三〇〇〇万強で、フィリピン(七二〇〇万)の半分にも満たない“小国”でもあります。このように広大な国土と僅少な人口というアンバランスが、隣国の巨人アメリカとの対比のなかで、カナダを理解しにくくしているのかもしれません。世界のグローバル化が加速度的に進む現在、日本人は異文化を理解する必要に迫られています。世界の国々を平易な形で紹介する明石書店のシリーズの企画に賛同し、カナダという多民族からなる国民国家の現状を紹介するための編集を試みました。本書の特色はカナダの「自然と環境」「歴史」「政治・外交」「経済」「民族関係」「社会」「教育・言語・スポーツ」などの部門それぞれについて、かなり細かい項目をたて、その項目にくわしい専門の方々に執筆をお願いしたことです。もちろん学術書という形をとっていませんから、くわしさにも限界がありますが、「世界一住みよい国」といわれるカナダのまだ一般に知られていない部分も、かなり紹介できたものと考えています。はじめに 編者